最遊記歌劇伝-外伝- 感想

最遊記という作品、歌劇伝という舞台にめちゃめちゃ思い入れのある人たちの作る実質完結編、そりゃあよく、期待していたものが期待していた以上の密度で出でてきて笑い、べちょべちょに泣き……

 

いつもながら舞台装置の動かし方がえげつなくて、よくあんな……機構自体はシンプルな、左右対象の二階建ての櫓が回転するというものなのですが、戸板で壁を作ったり外したりして通路を作ったり、役者が階段を上っている間に回転させて二階に抜けさせたり、どういう頭をしていたら三時間みっちりこんなミザンスをつけられるのか不明、すごすぎる。三浦さんの演出で楽しいところはたくさん挙げられるのですが、空間把握能力がものすごく高く、出ハケの冗長さが一切ない心地いい場面転換をやってるところは楽しい通り越して圧倒される。これが見たくて来てる部分もあり、毎度はしゃいでしまう。

 

今回の期待その2、ラストシーンは四人揃って三蔵一行の姿で出てくるに違いないと思っていましたが、その通りに悟空へ手を差し伸べる三蔵で四人がそろってgo to the westを歌い無印に戻るの、物語の円環が閉じていて美しい完結編のありかただった。

毎度公演ごとに最高のドカ盛りメドレーverに比べると、ベーシックなgo to the westってものすごくシンプルで、それが原点回帰という感がとてもあってね。そこにいるのも三蔵一行、観世音菩薩、光明、二郎神(うじすけさんは絶対に出さないといけないもんね~!)、烏(烏哭……そして橋本さん……)の最もシンプルな歌劇伝の布陣で、それに返ったらもうこれ以上やりようがないじゃん。ここに出すため三上さんを全日ゲストにするのすげえことするが、とても正しいな……。出してくれてありがとうね……カーテンコールのはけぎわにタイソンさんとなかよくたのしそうだったのもよかったし。

go to the westで言うとお話の中での本歌取りもよくて、桜の下での四人での酒盛りにgo to the westのフレーズを持ってきて、桜の下で再会しましょうにリフレインするのも美しかった。

 

勿論今回単独でもお話がよくて、今回限りのキャラクターもとてもよかった。哪吒も観世音菩薩もあまりにも峰倉先生の描くシルエットそのままでびっくりしちゃった。漫画ってシルエットでも誰かわかるように作るのが大事なんだと思いますが、舞台でもばっちりそれをやっていておもしろいな~

一方でうじすけさんは二郎神のフォルムじゃないのですが、うじすけさんは出さないといけないからな。でてくれてよかった~

 

しかし歌劇伝見ると毎回漫画のサブテキストのように漫画のことがわかるようになった!ってなるんですが、今回は観世音菩薩と敖潤がわかるようになりました。

観世音菩薩、前半まで観て、なんだよ……強いのに何もしてくれねえな……と思ってたら、最後まで観てべっちょべちょになっていたのでそりゃあしかたないなになっちゃった。あんなにも情にあふれた中間管理職でやりたいこと何もできず、ずーっとやけくそでひょうひょうとしている人だと初めて知ったな。これから漫画読んでも見る目が変わってしまうよ。

敖潤は敖潤で、漫画だとあまり表情が動かないのでそんなに四人に対しての情があるのかあ、という感じがしていたのですが、情はありまくりだったな。人質になっている間にすっかり四人のことすきになっちゃって……しかしそれってストックホルム症候群じゃないか?だいじょうぶ?

敖潤って全編かなり気の毒でかわいくてよかったな。しっとりしたお歌をうたっているときにまわりで要らんこと100されて抗議するの本当に最高のナンバーだったし。アンパンマンに映画泥棒にエレベータ前の刺客、もうしょうもないにしょうもないがやっぱり演劇の要らんことっておもしろいんだよな。

天蓬も捲簾も要らんことばかり話してて、話なんてなんでもよくて、なにかを覚えていてくれればそれでいいという意味のことを言っていたし。生きること、要らんことばかりの積み重ねかもしれんね。ぜんぶ要るし覚えているよ~!